『成瀬は天下を取りに行く』は2023年3月に出版され、続編『成瀬は信じた道を行く』が2024年1月に出版されました。本書は、2024年本屋大賞をはじめ数多くの賞に選ばれ、2024年の11月現在、本屋は平積みの成瀬コーナーが設置され、多くの著名人や一般人が書評・読書感想を寄せています。
40代前半の悩める自分にすごく刺さりました。
とにかく色々思うところがあったので、今さらながらの読書感想を書かせてください。
※ネタばれを含むのでご注意ください。
ストーリー概要(Amazonより)
『成瀬は天下を取りにいく』のあらすじ
2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。
『成瀬は信じた道をいく』のあらすじ
成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!
感想:成瀬への憧れと、成瀬になれない自分
この本を読んで、何が面白いか、成瀬のキャラクターの魅力について、他の場所で多くの人が語っているので、このブログでは、屈折した自分が強く感じた、以下2点にしぼって、感想を書きます。
- 成瀬あかりは所ジョージ的な憧れ対象
- 成瀬になれないルッキズム・学歴を気にする自分
成瀬あかりは所ジョージ的な憧れ対象
成瀬あかりのキャラクターを特に表現しているのが、以下の文章です。
成瀬に憧れを持った小学生が、地域を誰に頼まれたわけでもなくパトロールをしている成瀬に対して「将来何になりたいか?」を聞いた時の、高校生の成瀬の言葉が以下。
(2冊目の『成瀬は信じた道を行く』P26-27からの引用)
「先のことはわからないから何とも言えないが・・・・・。
何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている。」
「たとえばわたしはパトロールを好きでやっているが、警察官になりたいとは思っていない。
会社員になったとしても、パトロールはできるだろう。だからわたしが何になるかは未定だが、地域に貢献したいとか、人の役に立ちたいとは思っている。」
成瀬は「何をやるか」を大事にしていて、この【価値観】がぶれない。ここに圧倒的な憧れを感じる。
個人的な話になるが、、、
===↓ここから少し私の自分語り始まります===
私は、40代になり仕事もそれなりにやってきて、子供もできて、貯金もたまってきて、、、となった時に、適応障害となり、急に働けなくなった。
色々調べると中年の80%の人が襲われる”ミッドライフ・クライシス”と呼ばれるものにはまっていることがわかった。
人によって原因は様々であるようだが、何かする時に、以下2つの動機があり、外発的動機を中心に生きてきた人は中年になると辛くなることがあるようだ。
外発的動機付け | 評価・賞罰・強制などの人為的な刺激による動機付け |
内発的動機付け | 評価・賞罰・強制などの人為的な刺激による動機付け |
まさに自分の人生を振り返ると外発的動機付けの割合が多くなってきたように思う。
外発的動機付けで、偏差値の高い大学へ進学、給料の高い大企業への就職、給料の上がる役職への昇進、、、と収入もそれなりにあり、貯金も増えてきた。
だが、40代になり管理職としての仕事が激務となり、体力低下、親との死別、家族(妻・子供)の関係性の悩み、今までの価値観で何年か生きて死ぬだけでいいのか、という悩みにはまって、仕事に行けなくなった。
今、完全な解決策は見いだせていないが、80%の人が同様の悩みを抱えていることを理解して、いくつか改善策をためしながら、今後も生きていこうとしている。
===↑自分語り以上です(失礼しました)===
そんな外発的動機付け中心で、他人の目や評価を気にして生きてきた悩める中年は、内発的動機付け100%で動く成瀬あかりが羨ましく、憧れる。
これって「所ジョージ」が自分自身がやりたいことを楽しんでやっているのを見て羨ましく思うのに似ていると感じるのである。
成瀬になれないルッキズム・学歴を気にする自分
成瀬に対して、外発的動機付けが強い人間が違和感なく憧れられる理由が2つあると感じた。
そして、この2点を気にしていることが、成瀬あかりにはなれず、憧れている側にいる自分を再認識させられるのである。
- 容姿が整っている若い女性
- 京大に余裕で現役合格
本書のストーリーの中で、成瀬の容姿について、高校入学時に坊主にしたということ以外にまわりから成瀬の容姿に対する直接的な表現はない(と思う)。しかし、びわ湖大津観光大使に選ばれるということで容姿は一定以上である設定であると推察される。何より書籍の表紙で、成瀬のビジュアルがよいのがわかる。
そして2冊目では、京大に余裕で現役合格する。
これが、「容姿の整っていない、聞いたこともない大学に入学する女子高校生・大学生」の内発的動機付けで展開する話となると、違った見え方になるのではないか。
例えば、文書が全く同じでも、表紙に成瀬の容姿が一切登場せず、大津パルコ、西部ライオンズのユニフォームや、ミシガンの絵だけだったら、、、今と違う印象の読者も多いのではないか。
ということを考えてしまっている。
そして成瀬が今後「何をやるか」というのはもちろん知りたいが、成瀬がこだわっていない「何になるか」という結果を知りたい自分がいる。
このような古い価値観が染みついた私は成瀬あかりではないのである。
だからこそ羨み、憧れ、成瀬のこれからをもっと知りたいのだろうというのをしみじみと感じた。
まとめ
成瀬シリーズ2冊を読んで、読書感想文を20年以上ぶり書いてみました。
今回、私個人の目線に絞って感想を書きましたが、読む人によって面白い、刺さると感じるポイントは違うと思います。
少なくとも、
『自分が本当にやりたいことがやれているだろうか?』
ということに疑問がある人には、伝わることものがあると思います。
おすすめです!
▼天下を取りにいくが1巻です▼

▼信じた道をいくが続編です▼

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